認知行動療法とは…
認知行動療法はパニック障害・社会不安障害・強迫性障害など、不安や恐怖を主症状とする心の病気の改善に有効で、さらに、近年ではうつ病・適応障害・不登校・依存症など心理的苦痛や問題に対しても効果が期待できるとされ、欧米では積極的に取り入れられている治療法です。認知とは、ものの考え方、受け取り方のことで、人によって様々です。例えば、ある人にメールを送ったけど返事が来ない場合、
▲私は嫌われたのかも |
▲あの人は怒っているのかも |
▲あの人はひどい人なのかも |
などいろいろな考えが浮かび、感情の変化や身体の反応が生じます。しかし、相手の人に電話をするか、もう一度メールすると 「ごめん忙しくてつい…」「携帯をどこかに置き忘れて…」と事情がわかり、負の感情はなくなります。結局、ある行動により現実を確認して先に進むことができた訳です。
認知療法
コップに水が半分は入っている場合、
◎プラス思考「半分も入っている」
×マイナス思考「半分しか入ってない」
と二通りの考えが浮かびますが、いつもプラス思考をする必要はありません。砂漠にいれば「半分しか入ってないので、節約して飲もう」と考える方がよいでしょう!このようにカウンセラーと一緒に、「今の現実に目を向ける訓練」をして認知の修正を行います。
落ち込み…過去を振り返って悩んでいますが、過去を変えることはできません。そこで過去の失敗を繰り返さないために「今、何ができるか」を考えます。
不安…将来を心配して不安になっていますが、将来に何が起こるかわかりません。そこで将来のために「今から何を準備したらいいか」を考えます。
行動療法
「元気があれば何でもできる」(内⇒外)ではなく、「何かをすれば元気が出る」(外⇒内)という行動をすることにより問題の解決をします!そのためには『こういうことをすればうまく行くんだ』という体験が大切です。例えば、いつも他人が自分のことをどう思っているか気にすることで心が疲れ落ち込んでいる患者さんに対し、カウンセラーは「そんなに気にしなくていい!」とアドバイスするのではなく、『ありのままの自分を出す』ことを提案します。結果、素の自分を受け入れてくれる人との出会いがあり、飾らない本当の自分のままで話せる親友を作ることができました。何かをさせないことは難しいのですが、別の何かをしてもらうことは簡単なのです。ある寺の住職が言いました。「心を病んだ人に座禅で心を無にさせることは難しいが、寺の庭掃除をさせることは簡単」だと。 老子曰く「お腹がすいた人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」カウンセラーは患者さんに、できることから少しずつ行動をさせることで問題を解決してもらいます。
集団認知行動療法
うつ病・パニック・社交不安・不眠・職場復帰・不登校・発達障害など同じ問題を抱える方に集まっていただき認知行動療法を行います。認知行動療法をグループで行う利点は、同じ問題に苦しむ人がいることで孤独感が和らいだり、同じ問題に一生懸命に立ち向かう他の参加者を見て勇気付けられたりすることです。問題を先に改善していく人を直接見ることで、将来への見通しをもつことができます。個別療法よりも費用が安くなるため、気軽に参加できるなどの利点もあります。
自律訓練法
食欲不振・不眠・頭重・動悸・胃のもたれ・便秘や下痢などの症状はストレス状態の悪化によって引き起こされ、自律神経の働きが大きく関与しています。自律訓練法は、1932年にドイツの神経科医であるシュルツによって体系化された心理生理的訓練法です。訓練を行うことによりリラックスした状態、心身ともにゆったりとくつろいだ状態が、自力で得られるようになります。自律訓練法は、7つの公式(練習)からなり、各公式を1日に2~3回、各10分程度行います。
自律訓練法はほとんど副作用の問題はありませんが、心臓や胃が悪い人は一部の訓練で避けるべきところもあるため、専門家の指導のもとで訓練を行う必要があります。
プログラム
- 第1回 概要の説明・精神安定練習
- 第2回 四肢重感練習
- 第3回 四肢温感練習
- 第4回 心臓調整練習
- 第5回 呼吸調整練習
- 第6回 腹部温感練習
- 第7回 額部涼感練習
心療内科を受診される患者さんには,リラックスした状態あるいは力を抜くことを忘れてしまっている方が多く、リラックスした状態を体験してもらうことにより、いろいろな身体や精神的な症状が緩和される可能性があります(もちろん個人差はあります)。